−末期がんの介護保険対応 

末期がん患者が在宅療養で介護保険を利用する際、要介護認定が間に合わず生前に必要なサービスを受けられない例があることが、姫路市NPO法人の調査で分かった。病状が小康状態の場合、軽度に認定されるなど、約7割の患者の支援に課題があった。40歳以上の末期がん患者は2006年から介護保険の対象だが、終末期を支える制度の不備が浮き彫りになった。
 介護サービスを評価するNPO法人姫路市介護サービス第三者評価機構」が08〜09年、同市内の居宅介護支援事業所全136カ所を対象に実施。06〜08年に末期がん患者の利用者を担当したケアマネジャー135人中89人が答えた。
 患者194人のうち、認定に時間がかかったり、要介護度が実態にそぐわなかったりしたのは68%(132人)に達した。認定までに平均3週間かかっており、介護用ベッドがすぐに使えないなどの支障があった。
 時間がかかった理由(複数回答)として「訪問調査がすぐに実施されなかった」(40人)、「主治医の意見書の提出が遅れた」(30人)が多かった。訪問調査を待たずに亡くなった患者も10人いた。
 また、末期にもかかわらず、最も介護度が低い「要支援」と判定されたのは25人。要支援では、利用できる訪問介護は週2回程度。ベッドや車いすなどの福祉用具を借りる際は本人負担になる。支給限度額を超えたサービスを自己負担で受けた人も5人いた。
 調査に加わった近畿大学豊岡短期大学豊岡市)の武田英樹・准教授(37)=社会福祉学=は「がん末期は病状が急変しやすい。悪化を考えた認定ができるよう制度改正が必要だ」と話す。
 厚生労働省老人保健課は「手続きの迅速化については自治体に求めている。末期がん患者のみ要介護度を上げるのは公平性に欠ける」としている。
■末期がん患者の介護サービス
 訪問介護福祉用具の利用、訪問入浴などが介護保険によって提供される。利用申請後、訪問調査を経て審査会で結論が出る前に「暫定ケアプラン」で介護サービスを受けることが可能だが、十分なサービスが提供できない弊害がある。また調査前に亡くなった場合、全額本人負担になる。(萩原 真)神戸新聞(2010/08/17 07:00)