唾液分析:膵臓など3種のがん発見 

 唾液(だえき)中の成分を分析し、膵臓(すいぞう)がんなど3種類のがんを高精度で診断する技術を、慶応大先端生命科学研究所などの研究チームが開発した。これまでは早期発見が難しかったがんを、患者の負担なく診断できる方法として実用化が期待される。オランダで開催中の国際メタボローム学会で発表した。
 杉本昌弘・同大特別研究講師(計算生物学)によると、共同で研究を進めるカリフォルニア大学ロサンゼルス校が収集した11〜87歳の215人分の唾液を調べた。健康な人(87人)▽膵臓がん患者(18人)▽乳がん患者(30人)▽口腔(こうくう)がん患者(69人)▽歯周病患者(11人)−−の唾液を採取し、唾液中の約500種類の物質から、健康な人と3種類のがんの人で濃度に大きな差がある54の物質を特定した。
 さらに、1物質だけでは濃度の差が明確ではないため、複数の物質を組み合わせて濃度の違いを調べた。
 その結果、膵臓がんの場合はフェニルアラニンなど5物質を調べることで、99%の精度で健康な人や他のがんと判別することができた。乳がんは95%、口腔がんは80%の精度だった。
 杉本講師によると、唾液でがん診断を目指す研究は世界で進んでいるが、精度の低さが課題だった。杉本講師は「他のがんや病気も含めた分析を進め、実用化に近づけたい」と話す。毎日新聞10.6.30