−4年前に聞きたかった SANPODORI

 桐生厚生病院では、静岡がんセンターから送られてくるがん治療に関する講演等のDVDを貸し出してくれる。1月の「がんサロン」に参加した時、自分が経験した「食道がん」に関するDVDを2枚借りてきた。

 その中の一枚「食道がん、口腔がんのリハビリテーション」が印象的だった。「呼吸」と「嚥下」について、とても丁寧でわかりやすい説明だった。私の手術は4年前であったが、その時こういう説明が聞けたら、どんなによかったかと思わざるを得なかった。特に、なぜそういうリハビリが必要なのかがとてもよくわかった。私が手術をした「……病院」では、残念ながら、その十分の一の説明も聞かせてもらえなかったのだ。

 退院時には、主に食事についての注意(その話をした人がどういう立場の人だったか覚えていない)と主治医からの割合時間を掛けての話があったが、今、それだけではまったく不十分だったと感じている。主治医が「これからいろいろなことが起こりますよ」と言っていたが、その時は何となく「意味深長な言葉だ」と感じてたが、具体的には何のことか全く見当もつかなかった。だから、わからなくても何の質問もできなかった。その意味深な言葉が、肺機能の低下による体力の落ち込み、逆流、ダンピング症状誤嚥、腸閉塞、肺炎の心配等々を指していたのだろうと推測できたのは、2年も3年も経ってからのことだった。その時には、私の手術をした医師は既に別の病院に行ってしまっていなかった。すぐにわからなかった私の、愚かさ勉強不足ももちろん悪いが、「わかっているのだったら、なぜその時、丁寧に教えてくれなかったのか」。とても不満である。

 一人ひとりの患者にそんなに時間は掛けられないというなら、ペーパーを用意しておいて、それを渡してくれるだけでもいい。もっと何かやりようがあるはずだろうと思うのだ。病巣をたたいてやっつけてしまえばそれで治療は終わりという考えなのだろうか? いやまさかそんなことはあるまい。主治医は退院する私に「これからが本当の治療だと思うように」とも言っていた。その言葉の意味も私にはずっとわからなかった。そうだ、主治医はなにもかもわかっていたに違いない。だったらなぜもっとわかりやすく教えてくれなかったのだろう?「そうしたら、私はもっと一生懸命リハビリ的なことをやっていただろう。そして今頃は、もっといい状態になっていかもしれないのに」と思ってしまう。そして何よりも、いくつもの苦しい経験もしないですんでいたかもしれないとさえ思ってしまうのだ。

 以上のような私の経験からも、病院関係者に是非ともお願いしたいと思うのだ。患者を退院させる前に、もっと時間をかけた丁寧な指導をする仕組みを作っていただきたいと。(sanpodori)