「がんに強い群馬をつくろう」がん政策レターから転載

 さて、今回は7月3日に群馬県前橋市で行われた「がんに強い群馬をつくろう」という市民公開講座をご紹介しましょう。群馬大学医学部附属病院が主催で、「群馬県がん診療連携拠点病院連絡協議会」と「群馬県がん患者団体連絡協議会」が共催となっていました。100人以上の来場者がありましたが、患者関係者のみならず、県会議員、県庁関係者、拠点病院や医療機関の医師や看護師などの医療スタッフといった、多様なメンバーが集まっていることに感銘を受けました。
 私は「がんに強い社会を作る」と題してお話をしました。まず、がんの地域格差のことをじっくりと見ました。群馬県は、がん死亡率全体は日本平均より少なめなのですが、男性の結腸がん、直腸がん、白血病、そして女性の胃がん、肺がん、子宮がんなどは、平均より高めなのです。また、そうした死亡が多くなっているがんの中でも、県内の市町村によって大きな死亡率格差があります。これをグラフと色付け地図で示したところ、ショックをもって受け止められたようでした。こうしたデータは、がん政策情報センターの格差コーナーにありますので、みなさんも自分の地域で多いがんを確認してください。
 次に、群馬県のがん拠点病院の病院別の専門スタッフ数をグラフにしてお見せしました。がん治療認定医、がん薬物療法専門医、放射線治療認定医、がんに関連する認定看護師など、病院によって大きなばらつきがあります。また、病院別の手術数も示しました。このような地元の病院の数値は、誰にでも調べることができます。国立がん研究センターが提供する「がん情報サービス」の「がん診療連携拠点病院を地域別一覧から探す」(下記)に、がん拠点病院が更新申請をするときの書類が公開されています。そのうち、「指定要件に関する情報1」という文書から、このような数値を拾っていけばいいのです。あなたの県内病院の表を作成することは、おそらく数時間以内の作業でできるでしょう。挑戦してみてください。
 その後、各地のがん対策推進条例の策定状況と条例の内容をご紹介しました。群馬県では、群馬県議会に「がん対策特別委員会」が設置され、今年12月の条例制定を目指して作業が進められているとのことでした。参議院選挙前の多忙な時期にも関わらず同委員会メンバーの議員が来場されており、熱心な質問も受けました。無事、内容が充実した条例が制定されることを願います。
 講演の後の質疑応答の際に、群馬県がん患者団体連絡協議会のメンバーから質問がありました。「群馬県のがん対策推進協議会は公開されていない。どう思いますか」。私は「おかしい。公開されてしかるべき」と答えました。その場にいた県庁の方によると、「公開だが案内が十分にできていなかった」とのことでした。今後はもっと早く広く知らせていただけることになりました。そして、次回の群馬県がん対策推進協議会には、私も傍聴に行くことになりました。その日、来場していた患者関係者も議員も、大勢で一緒に傍聴に行くこととなり、県庁の方も歓迎とのことでした。
 みなさんも地元のがん対策推進協議会の日程を教えてください。県庁に聞けば日程が分かるでしょう。できれば傍聴にうかがいます。その際、患者団体の方々や県議会議員などにも広く声をかけてください。みんなで協議会を傍聴して、それから、いろいろと、がん対策談義をしましょう。
(センター長 埴岡 健一)