−懇談会のこと

 1月30日(土)、新装なった太田市の県立がんセンター3Fで「納得の医療、信頼の医療のための懇談会」が開かれました。晴れ上がり日光方面の山並みが綺麗でした。
 この懇談会は、厚労省の施策に基づくもので、全国で初めての開催とのことでした。懇談会を、待ち焦がれていた患者・家族が次々と到着し、定刻にはほぼ満席。お隣の埼玉県の方を含めると50人を越えました。約1/3が、がん連協からの登録者で心強く思いました。第一部、第二部とも講演者は県立がんセンターの方々が務めました。
 第一部は「治療の選択に困ったとき誰にどう相談するのか」と題して、がん医療をめぐる全般を猿木信裕・副院長兼がん登録室長、外科的手術を鹿沼達哉副院長兼婦人科部長、抗がん剤治療は湊 浩一医療局長兼呼吸器科部長、放射線治療は玉木義雄放射線治療部長兼重粒子線治療部長が連続して講演。第二部は、相談や質問をする際のコツなどを、鹿沼達哉副院長、桜井通恵病棟看護師、総合相談
支援センターの小池由美医療ソーシャルワーらから、実例をまじえたお話を伺いました。
 今回の懇談会は、患者・家族に医療者側が治療の現状を説明するのに重点が置かれ、患者・家族の質問時間は30分ほどでした。若干延長され、次のような質問が出されました。「診断から手術まで3ヶ月も待たされそう。がんは大丈夫なのか」「婦人科に入院中、胸のしこりに気づいて何回か看護師さんにいったが、大丈夫と言われ、そのままにしていたら乳がんだった。婦人科と乳腺外科との連携は病院内であるのか」「肺がんが再発して抗がん剤治療を始めたが、予定より追加されたり、薬が変わったりした。主治医は初発の時に手術をした外科医。抗がん剤治療になったら腫瘍内科で見て欲しい」など、どれも身近な問題でした。
 こうした質問に、「待てないようなら、他の病院を紹介してもらう方法もある」「婦人科に入院していても、検査をすることはできるので、医師にはっきり異常を伝えることが大切」「腫瘍内科医は日本にとても少ないが、各病院ともチーム医療で対処している」との回答がありました。時間があまりなく、参加者が抱いている疑問のごく一部を取りあげてもらうのが精一杯で、やや消化不良でした。
 もう少しかみ合った懇談会を期待した方も少なくないようでした。終了間際、「県内にある11のがん拠点病院でもこのような会を開いて欲しい」という意見が出され小出病院管理者が、「ご希望にそえるよう関係機関と相談してみたいと」答えました。
 参加した何人かの人に感想を聞いてみたところ、心強く感じた言葉がいくつもありました。「選択したことは後悔しない」「死ぬことよりも残りの人生をどう生きるかを考える」「コミュニケーションの大切さ」「自分の意見を持つこと」などでした。私もその通りだと思いました。また、患者が困ったり悩んだりしたとき相談支援センターを利用することも一つの助けになることを知りました。相談支援センターの一層の充実を希望しております。
 講演者はスライドを使い、それなりにご準備されながら、参加者には演題を書いた紙一枚が配布されただけで、レジメのようなものはありませんでした。ある程度知識のある人には退屈で、あまり知識のない人にはわかりにくかったように思いなす。主催者は第一部をどのように考えていたのでしょうか。会全体がなんとなくちぐはぐなものだったように感じられました。
 この日、出席した方の多くは今のがん医療に、少しでも役に立とうとして来られていたのではないでしょうか。例えば、「どこの病院でも標準的な治療がうけられるように…」「自分の犯した間違いを他の患者さんにして欲しくない…」「患者にとって優しい医療がうけられるように…」「がんで困っている患者や家族の力になれたら…」などです。
 厚労省の掛け声で行政(県)がとりあえず開催したというような雰囲気、と言うのもありました。この懇談会の真のねらいは「患者・家族の医療に対する認識と、医療者側の医療の不確実性の認識がお互いに理解されないことから、無用な訴訟や刑事告発に発展してしまう状況があり、医師確保の観点からも問題になっている。そのため情報を共有し両者の協働を促進することで相互理解を深め、より一層の信頼関係の構築を図ることを目的とする。」ところにあったと聞いています。
 それぞれが目指す最終的な目的が何であれ、「情報を共有」し「一層の信頼関係の構築を図ること」は大切なことです。お互いの信頼感を深める方向で丁寧な懇談会を積み重ねるなら、主催者が抱く心配の種も早晩解決の方向性が見えるのではないでしょうか。(鳥&葱)