−ピアサポーターの養成研修/奈良

 がん患者やその家族の精神面のケアを充実させようと、県が09〜10年度に初めて実施したがんのピアサポーター養成研修が終了し、12人が巣立った。県内の病院では、がん患者同士で悩みや経験を語り合う「患者サロン」の開設が相次いでいる。県保健予防課は「サロン運営で中心的な役割を担ってほしい」と期待している。
 「ピア」は「仲間」を意味する英語。ピアサポーターは、自らもがん患者か家族に患者がいる人で、他の患者たちの悩み相談などに応じる支援者を指す。県は昨年策定した「がん対策推進計画」(09〜12年度)で、県内に五つある2次医療圏でそれぞれ2人以上を育てる目標を掲げている。
 研修は今年2月と7月に開催。1回目は医師などの話を聞き、がん医療の基礎知識や個人情報の扱い方、カウンセリングの基礎などを身に付けた。2回目には、相談員役になって患者の話を聞くロールプレーなどを通じ、カウンセリング技術の向上を図った。
 研修に参加した大和郡山市北郡山町の無職、筒井寛さん(46)は約10年前から白血病で闘病中。「なぜこの若さで」と絶望したが、約1年前から患者サロンに参加し、互いの体験を語り合う中で生きる意欲を取り戻した。「自分がもらった元気を他の患者さんたちに還元したい」と意気込む。
 研修で講師を務めた国保中央病院地域支援センターの山崎優美代さん(52)は「患者本人にしか分からない気持ちは必ずある。私たち医療者にはできない役割を果たしてほしい」と話した。
 県内で患者サロンを開設している病院は、国保中央病院、県立奈良病院、県立医大付属病院の3カ所。県は12年度までに5病院に増やす目標を掲げている。【大久保昂】毎日新聞 2010年8月18日 地方版