−がん対策協 報道その3

 「がん対策推進基本計画」について検討する「がん対策推進協議会」(会長=垣添忠生日本対がん協会長)の11月19日の会合で、垣添会長の解任を求める「緊急動議」が患者委員から提出された。多数決の結果、会長続投が支持されたものの、垣添会長は辞任する意向を表明。次期計画の取りまとめに向け、この日から本格的な議論に入るはずだった協議会は一時空転、「法定の審議会で前代未聞」(厚生労働省)の事態となった。( 2010年11月19日 19:02 キャリアブレイン )
■「意見が反映されない」不満が噴出
 背景にあるのは、「意見が十分に反映されていない」という委員の不満だ。10月6日の前回会合では、天野慎介会長代理(NPO法人グループ・ネクサス理事長)ら8人が、運営の改善を求める意見書を提出。11月19日の会合では、さらに5人が加わり、20人の委員のうち13人による連名で、改めて垣添会長と鈴木健彦・厚労省がん対策推進室長あてに出された。
 こうした動きを受け、垣添会長はこの日、「協議会の運営や事務局体制のあり方などの問題について共感する」と、会長として改善を求める要望書を外山千也厚労省健康局長にあてて提出。外山局長も冒頭のあいさつで、「がん医療政策の立案過程にがん患者が参加できるようになった意義を重く受け止め、患者の意向が反映されるように精いっぱい、対応していきたい」と応じていた。
 しかし、患者委員の郷内淳子委員(カトレアの森代表)が、垣添会長の「解任動議」を提出した。提出理由は、事務局を含めた協議会の運営手腕に対する疑問だった。前回会合で、協議会のあり方を問われた鈴木がん対策推進室長が「(基本法では)基本計画の策定、変更の際に意見を聞くこととしている。それ以外の業務はない」とした発言に、より包括的ながん対策の議論を求める立場として失望感があったと表明。さらに、運営改善を求める意見書が多くの委員連名で提出されたのを踏まえ、「これまでの進め方では、改善は望めない」「それなりの成果が得られていない場合、(長として)責任を取るという一般的なルールを適用してもよいのではないか」と、協議会トップの責任を断じた。
■「会長解任が良い手段か」
 これに対し、「事務局の責任を、なぜ会長が取らなければならないのか」(保坂シゲリ委員・日本医師会常任理事)、「改善を求める意見は賛成だが、会長解任が良い手段とは思えない」(門田守人委員・阪大副学長)、「『患者委員』もひとくくりにしないで。垣添会長の心痛を察する」(前川育委員・NPO法人周南いのちを考える会代表)など、垣添会長を擁護する発言が相次いだ。
 一方、嘉山孝正委員(国立がん研究センター理事長)は、「この協議会は、今まで(委員として)出た公の協議会の中で最低。不満が出てくるのは当然だ。旧来のお仕着せの会で、生きていない」とした上で、「会長と事務局は別ではない。トップが代われば、全部変わる」と強調した。
 多数決の結果、出席委員のうち進行役の天野会長代理を除く16人中12人が垣添会長の続投に賛成。郷内委員、埴岡健一委員(NPO法人日本医療政策機構理事)は反対した。垣添会長と嘉山委員は棄権した。
垣添氏、辞任の意向強く
 だが、垣添会長は「これだけ重大な提案を頂いたからには、会長を務めていくわけにはいかない。この場で辞任させていただく」とし、委員自体も辞める意向を示した。他の委員や事務局の慰留にも応じず、「これ以上、この会長に座っていても、状況を打開できるとは思えない」とした。会議終了後は、キャリアブレインの取材に対し、「強い衝撃を受けている。しかも患者委員から、あんなことを言われるなんて耐えられない」と語り、足早に会場を後にした。
 ただし、協議会の会長は委員による互選だが、委員の任命権者は厚生労働相。事務局は「この場で辞任を受理するなどできない」と、いったん議論を引き取った。「引き続き、垣添会長に務めていただくよう慰留を続ける」(外山健康局長)考えだ。